一人から始まる公開討論会
ではこの公開討論会は誰がどのようにして実現させたのか。
普通これだけ大掛かりなものを行うとなると、街の有力者か政治のセミプロしかできないとおもわれるかもしれない。しかし実際はごく一般的な人たちが実現させてきている。
学生、主婦、ビジネスマン、自営業者、市民団体のメンバーと、顔ぶれは千差万別であるが、たとえ政治に対して素人であっても公平な立場で自分たちの町や国の未来に思いを馳せている人であれば誰でも実行可能なのである。そして、たった一人が「公開討論会を開催したい」と決意したところから公開討論会は始まるのである。また公開討論会実現のために多くのメンバーの協力が得られることに越したことは無いが、やろうと思えば、当日運営以外はたった一人でも開催できるのである。
これからこの公開討論会実施に関するすべてのノウハウをお伝えしたいと思う。
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公開討論会が実施可能な選挙について
およそ選挙と名のつくものに対して公開討論会は可能である。無論、各政党の党首を決める選挙や民間の団体の長を決める選挙においては無条件で公開討論会は実施できる。問題は公職選挙法にかかわる選挙時における公開討論会の開催についてである。日本の公職選挙法においては、選挙運動は著しく制限されているので、選挙告示日前において特定の候補に対し投票を促す行為は原則として禁止されることになる。たとえ公開討論会が公平中立におこなわれるといっても、結果として聴衆を魅了した候補を利する可能性があるとするなら公職選挙法に対して違反しているのではないか、というのである。
しかし、もしこれが公職選挙法違反だとすると各陣営が行っている(告示日前の)決起大会やその他の活動はどうなるのであろうか。選挙運動とは特定の選挙と連動していることを前提としているとするなら、公開討論会は特定の選挙を明らかに想定している。しかし決して誰かを特定に応援しているわけではないので選挙運動ともいえない。最終のところは法解釈の問題になってくるのである。だから、もしこの公開討論会を思い立った人が街の選挙管理委員会にいって「公開討論会を開きたいのですが問題ありませんか」という質問をすると答は必ず「選挙法に違反する恐れがあるのでおやめになったほうが無難でしょう」という指導が返ってくるのである。しかし、公開討論会が違法かどうか、実は誰も判断できないのである。
一応自治省の見解としては、公開討論会の場で「私に1票ください。」とか「わたしの公約は、○○○○です。」という言葉を使わなければ、自分の今日までの実績やこれからのビジョンを伝えることにはなんの問題もないということになっている。公開討論会を主催しようという人たちから「選挙違反にならないでしょうか」とか「選挙管理委員会に行ったら選挙違反になると言われたのですが、どうしたらよいでしょうか」という質問をたびたび受けるが、主催者が公平中立を絶対的に意識の上で確認していたら問題はまず起こらないと断言してよい。少なくとも今日までただの1回も選挙法に触れる問題は発生していない。だからこれから公開討論会を実施しようとする人は自信を持っていただきたい。
さて公開討論会は市町村長選挙、都道府知事選挙、衆議院選挙、参議院選挙、各地方議会選挙のあらゆる選挙において実施が可能である。しかしそのなかでも各首長を選ぶ選挙の方が選挙民の関心が高いのも事実である。経験的に言えば市町村長選や知事選においては大体会場が人であふれるのに対し、県会議員選挙における討論会には100人前後の人しか集まらないこともしばしばであった。確かに首長選における候補者の発言に有権者の関心があつまるのも当然といえよう。ただ同じ議会選挙でも国政に限って言えば、小選挙区においては1人を選ぶので、首長選挙なみの関心がうまれてくる。この現実を踏まえた上で目の前の選挙において公開討論会にとりくんでいただきたい。
議会選挙よりも首長選に人が集まるもうひとつの理由は、やはり1人を選ぶ選挙の方が候補者の政策やビジョンあるいは人柄の差がより鮮烈になるともいえる。今まで市町村会議員の選挙でも見事に公開討論会を実現し多くの有権者が集まった事例も少なくないのであらゆる選挙において可能だといえるが、以上のことを認識していただいた上で大いに取り組んでいただければ幸いである。
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公開討論会実施者の条件
基本的に公開討論会はあらゆる市民に門戸が開かれている。たとえ暴力団であっても反社会的な宗教団体であっても公開討論会を開く権利がないとは決していえない。しかし少なくともわたしたちリンカーン・フォーラムが関わる公開討論会においては、かなり実施者を吟味してサポートをしている。公開討論会実施代表者に関しては、原則として次の4つの条件を満たしていることが必要である。
1、 その選挙区の住人であること
その選挙区の住人であるということを広義に解釈すると、その選挙区に住民票がおいてあるか、主たる住まいが選挙区にあるか、本人の主たる職場がその選挙区にあるかのいずれかを満たしていることが必要条件である。他のメンバーに関してはこの条件に合ってなくても差し支えないが代表者には絶対の条件である。
2、 政治的に公平中立であること
政治的に中立ということはその選挙において特定の候補者を表立って応援していないことである。勿論心の中で特定の候補を支持していてもそれは一向に構わないが、それが公のレベルで表面化したり「公開討論会が特定の候補を当選させる目的で開催されるのではないか?」という懸念をもたれる行動を決して行ってはならない。また公開討論会を自分の政治的パフォーマンスに利用してはならない。つまり主催者が同じ選挙区における目前に控えた別の選挙に立候補するため、自分の名前を売るために公開討論会を利用してはならないのである。ただしこの公開討論会に携わることによって政治に対する関心が高まり、結果として自身が立候補することは、まったく問題がない。
3、 約1ヶ月間、ある程度の時間の自由があること
公開討論会の実施のためには約1ヶ月間の準備が必要である。ある衆議院の補選において5日間の突貫工事で開催させたこともあるがこれは緊急避難的なものでかなり無理があった。今日ゼロからスタートさせて実施日まで余裕を見て、1ヶ月間は予定しておきたい。当然実施する人はそれぞれ仕事を持っているので1ヶ月間公開討論会の準備ばかりをしているわけではない。しかし候補者との折衝や会場の手配など、ある程度時間的余裕がないとできない。少なくとも本人かあるいは、主催するメンバーの中で時間のやりくりができることが条件である。
4、 人間的に信頼されている人
これは抽象的な表現になるが、やはり周囲の人に嫌われている人はだめである。人間的に信頼されている、というのは決してその地域においての有力者ということではない。今日まで学生や一般の主婦が討論会を実現してきたのを見ても社会的地位は必要ない。むしろ経験的にはその地域の有力者はさまざまな政治的つながりがあり、公開討論会の実施者としては難しい場合のほうが多い。その意味では、今まで政治に対し無関係の人のほうがやりやすいともいえる。しかし地域社会の中で問題を起こしたり奇矯な行動を起こして周囲から危険視されているような人をサポートすることはできない。
以上の4点が公開討論会の実施代表者の条件であり、後は本人が熱意を持って取り組めばかならず実現に向かって進んでいくことができる。
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公開討論会実施団体について
さて公開討論会の実施団体について説明したい。公開討論会は一人の個人があらたに組織を作って開催する場合と、既存の団体が行う場合の2通りの方法がある。
まず一人からはじめる場合についてのべたい。基本的には公開討論会が一人によって開催できるといってもやはり何人かのメンバーを集めなければいけない。しかし突然周囲の人に「公開討論会をやりたい」といっても反対されるのが落ちである。そこでできれば近隣の都市で公開討論会を実際に開催した人に教えを請いに行くことが第一歩となる。しかし公開討論会の中には何らかの政治的意図があるものもあるから、できればリンカーン・フォーラム方式で行っているところが望ましいのはいうまでもない。もしあなたの周囲に公開討論会を実施した人がいなければリンカーン・フォーラムの本部(03-5777-5367)に直接問い合わせていただきたい。勿論本書をよく読んでから質問をしていただきたいが遠慮なく仰っていただきたい。できる限りのサポートをするつもりでいる。
さて目標の選挙が確定したら公開討論会の趣意書(参照:参考資料1)を書いていただきたい。そして発起人を集めるのである。理論上は何人集めなければいけないという規則はないが、できる限り多くの人の名前を連ねていたほうが説得力が増すことは言うまでもない。発起人のなかに町の有力者や学識経験者がいれば、会自体が重みをもつ。私はかつて公開討論会を開始し始めた当初、人から人を尋ねて公開討論会の実行者を探したことがあるが、情熱を持って語ればおおくの人々が共鳴してくれて発起人も十分に集まった。できれば10人以上は集めたいものである。なお、リンカーン・フォーラム方式の公開討論会は「ニュースステーション」(テレビ朝日)や「筑紫哲也NEWS23」(TBS)などのニュース番組で何度も特集されているので、発起人依頼の際にこれらのビデオを見せると効果的である。
発起人の依頼や発起人名簿作成時に気をつけていただきたいことは、発起人は必ずしも有力者や有名人である必要はないが、政治的に中立な人のほうが良い、ということである。中でも会の中に反保守の人がまじっていると保守の側から見た時に会全体が革新寄りに見えてしまい、候補者の参加要請が難航するときがある。その意味ではどんなに名が通っている人でも政治的匂いの強い人は名前を消しておいたほうが無難であろう。また会に対して協力を仰ぐ団体があったとしても、やはり政治的中立を疑われる団体の名前を公にすることは問題があろう。会が公平に運営されることを前提とするなら影で応援してもらうことは差し支えない。また発起人や協力団体は必ずしもその選挙区に在住している必要はない。全国どこの団体でもかまわない。
ここで発起人依頼に関して注意点をもうひとつ挙げたい。公開討論会では候補者との折衝や会場の設定などで緊急に代表者が決断しなければならないときが少なからずでてくる。そのときにいちいち会を召集して決定する時間がない場合に発起人のなかで異論がでてくると内部分裂を起こしかねない。だから発起人はいざというときには決定を最後は代表者に委ねることを確認しておいたほうがよい。後になって内部でもめるのもみっともないし実施後も後味が悪い。ここのところは最初に確認しておいたほうがよい。
さて会の名前であるがやはり全体として一般の市民に会の目的が一発でわかるもののほうが望ましい。今まで色々検討してきたが結局「'99○○○で公開討論会を実現する市民の会」のようにオーソドックスなものが評判がよかった。あまり凝った名前をつけると後でトラブルが発生したり市民に無視されることもあるので気をつけていただきたい。以上が一人から会を立ち上げる時のやり方である。
さて次に既存の団体が公開討論会を開催する場合の留意点を述べてみたい。既存の団体の場合、改めて会をつくる必要がないので一人ではじめるより楽だと思う人もいるだろうが、そうは簡単ではない。確かに日本青年会議所や各地の商工会青年部などがツボにはまった運営ができれば、機動力がある分、完成度は高くなる。しかし既存の会の場合、やはりメンバー間で政治的なしがらみがあったりして会の運営理事会で決定するのに大変な時間がかかることがある。それでも実現すれば言うことはないが、お流れになるケースも少なくない。せっかくメンバーのなかにやる気のある人材がいるのであるから、その場合はその団体の有志が集まってやったほうがうまくいくだろう。ちなみに、これまで各地の青年会議所が企画した約40回の公開討論会のうち、青年会議所主催で成功したケースが1/3、メンバー有志が別団体を結成して成功したケースが1/3、運営上の問題などで失敗したケースが1/3である。
もうひとつ既存の団体が公開討論会を開催する場合に留意しなければいけないことがある。それは、公開討論会はあくまでも公平に候補者から政策やビジョンを聞く会であって、その団体の活動に関する意見を聞く会ではないということである。例えば1999年東京都知事選挙の時にある青年団体が自分たちの施設の存続に関して候補者の考えを聞く公開討論会を開催した。しかしほとんどの候補者は集まらず公開討論会の意義も問われた。候補者とても、限りある時間の中で自分の考えを有権者に伝えなければならない。やはり法的には問題がなくても、自分たちの活動の是非を問うような討論会の開催は慎むべきではなかろうか。またある時公開討論会を開催しようという団体からサポートの依頼があったときのことである。かれらの趣意書を見ると地域のNPOが集まって「NPOに関する」候補者同志の公開討論会を企画していた。趣旨そのものは決して悪くはないが現職は参加を固辞し開催は断念に追い込まれた。やはり仮に総花的になったとしても選挙に関わる討論会においては総合的な質問をするべきであろう。
ただ今まで何らかの政治的活動をしている団体が公開討論会を実現した事例はゼロではない。例えばある市長選挙において地域の福祉団体が連合して福祉に関する議題を中心に据えながら総合的に市制に関する討論会を開催した。これは有権者もたくさん集まり盛り上がった会になった。また時々、女性をたくさん議員にしようという団体から公開討論会開催についてサポートの依頼を受けることがある。候補者のなかに女性が混じっていればその候補者を支援することになるので、リンカーン・フォーラムが協力協賛という形で参画することはお断りしているが一応正式なやり方はお伝えしている。それでも結果として候補者も有権者も集まり成功した事例もかなりみうけられる。もしご自分たちの団体に対し政治的に問題が発生しそうであれば本部に問い合わせていただきたい。
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会の名称と事務局について
会の名称については開催団体のところで少し触れたが、やはり奇をてらったものよりオーソドックスなもののほうが望ましい。これも規則があるわけではないのでメンバーで話し合って決めていただきたいが経験上、「2001○○で公開討論会を実現する市民の会」「2001○○選公開討論会実行委員会」のように、「対象選挙年」と「目的」がわかりやすいものがよい。
ここで一点注意していただきたいことは、公開討論会が選挙告示日までに開かれるときはまだ、公職選挙法上の「候補者」はいない。どんなに風評としてその人の名前が巷で挙がっていても告示日までは正式な「候補者」ではないのである。従って会の名前として「○○市長選挙の候補者による公開討論会を実現する市民の会」のような名前をつけると問題が起こる可能性がある。選挙前ならば誰も疑問を持たないだろうが、もし表現するとするなら「立候補表明者」となる。気をつけていただきたい。
次に事務局であるが、やはり代表の自宅か、また可能なら会社の事務所などを拠点にするのがよいだろう。また代表の自宅でなくても会の所在地がはっきりしていればなんの問題もない。ただし連絡先については会が公になった時点でいつ外部から連絡がきても大丈夫なように明確にしておくことが必要である。今までまれに新聞に公表された連絡先がいつも留守番電話になっていたりして顰蹙を買ったことがあったようだ。留意していただきたい。
また、事務局は実行委員メンバーや記者クラブへのタイムリーな情報伝達が必要なのでFAXは必須である。できればインターネットが使えるパソコンがあることが望ましい
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公開討論会と合同個人演説会の違いについて
公開討論会を開催する場合、選挙の告示、公示日を境にして方法がまったく異なるのでよく吟味していただきたい。ちなみに選挙が始まる日は選挙によって呼び名が異なる。衆院選挙や参院選挙のような国政選挙が始まる日は「公示日」と呼ばれ、その他の選挙は「告示日」とよばれる。その日から選挙運動が開始することになる。その期間は2週間とか10日とか選挙によってまちまちであるが昔に比べると相対的に短くなっているようだ。日本の公職選挙法によると政治活動はかなり自由に行うことができるが、選挙運動に関してはできることはまことにかぎられている。そこで公開討論会も選挙の告示前と後ではまったく違ったものになる。告示日後に実施する場合は、公職選挙法上の「個人演説会」を候補者が合同で開催する形式を取るので、「合同個人演説会」と呼ぶ。それぞれメリットとデメリットがあるので、表1を参照しながらよく考えていただきたい。
表1
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公開討論会
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合同個人演説会
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開催日
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告示(公示)前
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告示(公示)後
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主催者
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第三者(私たち一般の市民)
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候補者が合同で
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費用負担
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第三者(私たち一般の市民)
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候補者が頭割りで分担
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会場費用
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特に恩恵なし
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公営施設は、候補者割り当ての無料会場が利用可能 |
候補者の呼称
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立候補表明者
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立候補者
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発言上の制限
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事前運動にあたる発言は公選法違反となる
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制限なし
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有権者の関心
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あまり関心が高くない
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一般的に関心が高い
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運営上の制限
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制限なし
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公職選挙法に規制される
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会場の予約
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自由
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正式には、告示(公示)後でないと予約できない |
会場の看板
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自由
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合同個人演説会の看板は掲示不可能 |
広報
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自由
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告示(公示)後、候補者陣営が広報するか、新聞による報道のみ可能 |
まず選挙告示前に行う「公開討論会」について説明したい。この場合主催者は当然こちら側になる。一番のメリットは、こちら側が主催者である分、主導権を握れることである。今まで大体90%が告示前に行っていることを見てもこちらの方が主流である。実際に法的にみても「選挙中は第三者が討論会を開いてはならない」という規定があるので、告示前に行うほうが一般的であろう。
しかしデメリットも何点か存在するので注意していただきたい。まず討論会に参加する人は厳密には候補者ではないので「私に1票をください」とか「わたしの公約は○○です」ということは公の場で言ってしまうと、事前運動(後述)ということで公選法違反となる。今までこの発言で問題になったことは一度もないのでそんなに神経質になる必要はないが、そこをたてにとって参加を拒否する候補者がいるかもわからない。これらの言葉は言わないように候補者に注意しておくことが大切である。
次に有権者の関心の程度であるが、やはり選挙が始まってからの方が盛り上がることは間違いない。その意味では告示後の「合同個人演説会」のほうに軍配があがる。だから仮に告示前であっても、できる限り告示日に近い日程のほうが望ましい。大体の公開討論会は、告示日前1週間以内に行っている。
さて告示日以降になると法律によって第三者が討論会を開催することはできないので、主催者は各候補者となる。主催者が各候補者であるといっても実際にはこちらがすべての運営をするのだが、形式としては、我々は各候補者から依頼を受けて裏方としてコーディネーター役を行うのである。しかしあくまでも主催者が各候補者なので手続きの手間が意外とかかる。例えば会場に公営施設を利用する場合は選管への届出が必要であり、申請書に参加するすべての候補者から印鑑を集めなければならない。それがなにかの拍子に会場変更にでもなろうものなら、かなりの労力を要する。また法律により、合同個人演説会の看板が掲示できない。ある合同個人演説会においては一人の候補の看板をたてることの方が合法で、「合同個人演説会」の看板を上げることのほうが違法となり、もめたことがあった。また根本的なこととして、お互い死力を尽くして戦っている時に悠長に「一緒に演説会を開きましょうよ」という呼びかけをする候補者がどれだけいるかとなったら、まだまだ日本では難しいかもしれない。
さらに技術的な問題として、たとえ合同個人演説会が可能になったとしても告示日までは公にすることはできないので広報が難しい。かつて鎌倉市長選で学生が公開討論会を開催したとき大いに盛り上がったのをうけて、同じ主催メンバーが翌年の参議院選挙で大きな会場を借り、公示日以降に合同個人演説会を開催しようとした。しかし、まったく広報ができず候補者は5人集まったものの、ほとんど有権者が集まらないという厳しい事態が発生したことがある。もし合同個人演説会にするならできる限り投票日に近い日程を指定したほうが良いだろう。
しかしこの合同演説会方式にも捨てがたい魅力がある。98年の宮城県知事選や99年の長崎県知事選においては告示日以降に行われ、2000人近い人が会場に詰め掛けている。当然のことながら選挙が近づいてきた方が有権者の関心はたかくなる。今まで合同個人演説会方式で行ったところは回数こそ少ないながらも、かなりの反響を得た。また選挙中であるから候補者の発言に関しては「私に1票ください」と叫んでも何の問題もない。さらに形式的には候補者自身が主催者であるから、私たち影のコーディネーターには費用負担が発生しないというメリットもある。そして、候補者には個人演説会のために公の施設を1回につき無料で利用できるという特典があるので、この権利を利用させていただくという手も使える。
そして最も現実的な問題として、急に欠員が出て補欠選挙がおこなわれる場合には、この合同演説会方式でしかできない場合もあろう。今日まで最短で開催したのは5日という記録があるが、これなども合同個人演説会方式である。このような諸事情を勘案しながら「告示前の公開討論会方式」にするか「告示後の合同公開討論会方式」にするか決定していただきたい。
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