2.候補者への出席依頼その@

 

 

 

  2.候補者への出席依頼その@

 

 書類の作成

 公開討論会の形式が確定したら早速実行に移したい。まず第一に発起人への声がけをしなければならないが、基本的な資料を持って行かなければ説得力はないだろう。この発起人に声をかける場合に必要な資料は次の4点である。
  1、 公開討論会開催に関する呼びかけ書
  2、 リンカーン・フォーラム設立趣意書
  3、 リンカーン・フォーラム方式公開討論会の開催実績(資料25
  4、 今までの公開討論会に関する記事(資料27〜  )

 

 

 公開討論会開催に関する呼びかけ書作成について

  呼びかけ書は発起人に対するものなのであまり難しく考えることはない。次の5点が盛り込まれていれば簡単なもので良い。

 第1は、発起人代表としての本人の名前と住所連絡先
 第2は、その選挙で、どうして公開討論会を開こうとしたのかその思い
 第3は、この公開討論会がいかなる政党や候補者からも中立であること
 第4は、この公開討論会が今全国的におおいに広がっていること。
 第5は、この討論会が一般市民のボランティアによってなりたっていること。

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 リンカーン・フォーラム設立趣意書

リンカーン・フォーラム設立趣意書

 日本は今、大きな時代の転換期を迎えています。超高齢化の問題、財政の極度の逼迫、不況に長期化、税負担の増大、環境破壊、教育の崩壊etc
  この大きな危機の時代に、日本の政治は、どの対処しようとしているのでしょうか。日本を改革し、日本人の心を取り戻し、世界に向けて日本の価値をどう発信しようとしているのでしょうか。
  私たちが政治に責任と自覚を持ってとりくまなくてはならない時代が来ました。アメリカのリンカーン大統領は、民主主義の理想を「人民の人民による人民のための政治をこの世から滅ぼしてはならない。」とゲティスバークで高らかに宣言しました。リンカーン・フォーラムは、この理想の民主主義を、この日本で実現することを目指し、いかなる政党や政治家からも独立したネットワークを創ることにしました。
  日本では、候補者同士の政策論議がほとんど行われないのが当たり前になっています。リンカーン・フォーラムは「公開討論会」の開催を通じて、政治家を選ぶ新しいルールを日本に根づかせるためにダイナミックな活動を展開しています。

 公開討論会は、
  1、 有権者が政策や人柄あるいは政党の根本方針を見極める機会になります。
  2、 政治の抱える問題点や課題が鮮明になります。
  3、 選択の基準が明確になります。
  4、 候補者が、政策や理念を有権者に訴え共感を得る機会となります。

 まず政治家選びの土台から変えて夢と活力のあるすばらしい日本の社会を創って子供達に手渡ししようではありませんか。多くの方がリンカーン・フォーラムに参加され、ともに歩まれることを念願してやみません。

 * お問い合わせ先
  リンカーン・フォーラム事務局

 〒107-0052 
  東京都港区元赤坂1-1-7-5F 
  TEL 03-5777-5367  FAX 03-5777-5368
  Email LF.office@touronkai.org


 

 公開討論会に関する記事について

 公開討論会に関する記事は、今日まで全国紙地方紙あわせると有にその数は2000を超える。私達の本部に問い合わせていただければいくらでもご紹介できる。東京都知事選や参議院選、またその開催地の近隣の選挙での公開討論会の記事など2、3の記事があれば十分であろう。(資料29〜)

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 公開討論会の企画作り

 公開討論会の開催企画について述べたい。公開討論会といっても「朝まで生テレビ」や「サンデープロジェクト」のように侃侃諤諤口角泡を飛ばしての罵りあいではない。それぞれの候補者が有権者の前で自説を開陳し、その政策や人柄を見極めよう、というものであるからそれぞれの政策発表会的なニュアンスがあると思っていただけたらよい。詳しいスケジュールに関しては後に詳述するとして、ここでは候補者に対する案内をする意味でも概略を説明したい。企画については次の3点を決めなければならない。


  1、 日時の選定
  日時の選定については候補者の予定もあるので、こちら側が独断で決定することはできない。しかしある程度告示日の前後の日程を選定する必要がある。とりあえず1つの日を提示した上で候補者の人との交渉に入るべきである。決して「いつがよろしいでしょうか」といったような下駄をあいてに預けることはしてはいけない。これでは主催者の主体性も失われるばかりか、投げかけられた方も困ってしまう。経験的に言うと各候補とも告示日1週間前というのは基本的に夜オフィシャルな行事は入っていないことがほとんどである。


  2、 場所の選定
  会場は公の公民館のような場所であってもホテルのような私的な場所であっても構わない。選挙によって違うがやはり首長選においては数百人以上が集まると考えて良い。会場の大きさについては良く吟味することが必要である。また時に知事選のような大きな選挙については会場によっては「相手候補の地盤だから問題だ」というようなクレームがつくことがあるかもしれない。わたしたちの方法では拍手や野次は一切禁止するので誰の地盤でやろうがまったく問題はないが注意は必要であろう。
  また選挙区によっては公の施設を利用するときに、この討論会が政治活動だからという理由で利用を拒否される場合も出てくる。しかし今日までいくらでも公の施設で開催した事例があり、粘り強く交渉すればなんとかなるものである。


  3、 企画内容
  時間は大体2時間。主催者の挨拶のあと、それぞれの候補が3分程の自己紹介および所信表明を行う。なお自己紹介や所信表明の時間を5分、10分と長めに設定するケースが見られるが、間延びしてしまうので、これらは3分以内に抑え各論できっちり意見してもらったほうが論旨が明快になる。自己紹介の後、いくつかのテーマについて議論してもらう。そのテーマはあらかじめ候補者に伝えておき約2、3分ずつそのテーマに関して自分の考えをのべてもらう。その後1,2分づつ議論する。時間に関してはタイムキーパーが管理し、誰かが時間的に得をしたり損をしたりしないようにする。テーマの設定は有権者から事前にアンケートをとるなどして有権者の関心が高いものを選ぶのが望ましい。1番はじめにテーマを確定して候補者に参加依頼をする必要はないが、このような一問一答方式討論会を行うことを伝えておく。この一問一答方式は、必ずしもこれが最高であるとは言えない。ただ現時点では各候補者の賛同も得られ、また有権者のほとんどが満足して帰るのがこの方式なのである。無論お互いの候補が徹底して議論することを望んでいるとするならそれもまたよしであって、激しい討論をしてはならないという法律はない。最近では各地で工夫を重ね、より"討論"らしい企画が成功しているのでいくつかのスタイルを紹介しよう。

 1) 一問一答+反論時間 形式
  一問一答が一巡した後、自分の政策への批判に対して反論、補足説明を述べる時間をもう一巡する形式。「一答」部分が3分であれば、「反論、補足説明」部分は2分程度にするとよい。初心者でも取り組みやすいのが長所。候補者の中に現職が含まれている場合、特に有効である。

 2) フリーディスカッション形式
  大きなテーマを3点ほど用意し、それぞれのテーマに対して20分程度のディスカッションを行う形式。一人1回あたりの発言時間を最大2分とし、何回発言してもよい。候補者が3名以上のときに有効。反論や反対質問も可能なため大いに盛り上がる。ただし、コーディネーターには高度な司会能力が要求される。

 3) ディベート形式
  1対1で討論する方式。ある市長選でディベートに挑戦したことがあったが、発言時間のルールを複雑にしすぎたため、あまりうまくいかなかった。また、企画内容がディベートであると公開討論会への出席には尻込みする候補者も多いので、企画打診以前に両候補者の了解が得られない限り実現は難しい。

 このように企画内容はよく検討していただきたいが、あまり無理をした企画をたてるとあとでひずみが大きくなる。初心者の場合、一問一答という公開討論会の王道を行くべきではなかろうか。

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 各立候補予定者への参加要請について

 公開討論会を開催する上において、この「各候補者への討論会への参加依頼」というのが最も大切な仕事になる。ここがスムーズに成就すると公開討論会はほぼ成功したといっても良い。しかしここで難航すると会の成功/不成功に大きな影響を与える。実際候補者は死活問題となる命がけの戦いをしている。そのなかで公開討論会に対する対応の仕方で、選挙戦にも少なからぬ影響もでる。この会が敵の候補の息がかかったもので、討論の途中でやり込められでもしたら大変である。その意味でも候補者本人はもとより、後援会や選対本部も非常に神経質になっている。従って討論会の主催者には、討論会を開く大儀に対する自信とあわせて、候補者に対する礼節の心が必要である。時に勘違いをして「良いことをするのだから候補者は出てくるのが当たり前だ」と思って会を運営し、結局、候補者に顰蹙を買って参加いただけない主催者もないではない。主催者は候補者に対しへりくだることはないとしても、候補者の方にお願いをする基本姿勢をしっかりもっていていただきたい。謙譲の美徳をもった情熱は人を動かすものである。そのことをよく認識した上で候補者への参加依頼は基本原則として次のステップで進めていきたい。

 第1ステップ 基本資料の作成
 第2ステップ 記者会見の準備
 第3ステップ 候補者へのファーストアプローチ
 第4ステップ 選挙管理委員会への届け出
 第5ステップ 記者会見
 第6ステップ 候補者事務所への直接の面会
 第7ステップ 参加承諾書の回収
  (場合によって第8ステップ 警察への警備依頼)

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 第1ステップ 基本資料7点セットの作成

 基本資料は次の7点を用意する。
 
 (ア) 公開討論会開催趣意書 (資料3
 (イ) 発起人名簿 (資料2
 (ウ) 公開討論会参加依頼書 (資料6
 (エ) 公開討論会参加承諾書 (資料7
 (オ) リンカーン・フォーラム方式公開討論会の開催実績(資料25
 (カ) 自治省選挙課の見解
 (キ) 公開討論会に関する新聞記事数点(資料29〜 )

 この7点の基本資料について説明したい。


  (ア) 公開討論会開催趣意書(資料3
  この「公開討論会開催趣意書」はこの選挙において、なぜ公開討論会を開こうと思ったか、その趣旨と会の名前、そして責任の所在を明確にすることを目的にしている。大体は発起人へのよびかけ文と重複するが、より開催の意思を鮮明にする。ある時、私達と関係のない怪しげな団体が公開討論会を企画してそれぞれの候補者をこき下ろした上で「自分たちが審判してやる。」式のまことに愚劣なチラシがある市長選で市民のポストにばら撒かれたことがあった。そのチラシをみてみると主催者の住所も名前もない怪文書で、危うく公開討論会の品位が汚されるところであった。
  「開催趣意書」では絶対に現在の行政のあり方を批判するような論調は避けるべきであろうし、自分たちの責任の所在を不明確にするべきではないだろう。
  特に代表者の素性はある程度明確にしておきたい。東京都知事選公開討論会の代表者の塩沢氏は自分のプロフィールを趣意書に添付していた。そこまでは必ずしも必要としないが、かなり慎重にした方がよい。
  一応資料として添付している見本には目を通しておいていただきたい。

 (イ) 発起人名簿(資料2
  「発起人名簿」についてはメンバーの輪郭をはっきりさせ、どこかの政党や誰かの候補の応援団ではないことを明確にしておく。細かな住所や仕事の役職まで記入する必要はないが、常識の範囲で住んでいる場所や肩書を記入しておく。地方によっては政治的に中立な人がほとんどいない場合もあり、そのときは意図的に各陣営の応援者から数人ずつ発起人を出したこともあった。また非常に公開討論会の趣旨に賛同しながらも特定の候補者を応援している人は、発起人名簿からは名前を消した上で、側面から協力していただいたこともあった。
  また協賛や協力団体についてもここであげておきたい。これもいままでの法則に則り政治的色彩の強い団体や個人は名簿から省いておいた方が賢明であろう。これも一応資料を参考にしていただきたい。

 (ウ) 公開討論会参加依頼書(資料6
  「参加依頼書」は候補者および/または後援会事務局に送るものであり、十分に礼節を尽くしたものであってほしい。参加依頼書は候補者の方々がご多忙であることを十分承知した上で、市民にとって非常に重要なものであることを重ねてお願いする。その上で承諾証をいつまでにほしいかを明記しておく。

 (エ) 公開討論会参加承諾証(資料7
  これは参加される候補者の方が公式に公開討論会への参加を承諾するものであり、もし欠席の場合はその理由も明記していただく。

 (オ) リンカーン・フォーラム方式公開討論会の開催実績(資料25
  リンカーン・フォーラムの「公開政策討論会実施マニュアル」(本マニュアルの前身)に基づいて開催された公開討論会、合同個人演説会のうち、本部に開催報告が届いたものを一覧表形式で記載している。
  リンカーン・フォーラム方式が全国におおいに広がっていることを候補者やマスコミの方に説明するのに有効である。なお、本資料は随時更新されるので、最新版をご希望の方は本部へ問い合わせてほしい。
  リンカーン・フォーラムのホームページ(https://www.touronkai.org/)からもダウンロードできる。

 (カ) 自治省選挙課の見解
  公開討論会および合同個人演説会の合法性について、私は何度も自治省選挙部選挙課を訪問し、担当課長と相談した。その結果、以下のとおり、合法であるという見解を得られた。この内容は私に同行取材した『AERA』の田岡記者が記事にしたので、図書館に行って『AERA』のバックナンバーを探せば原文を引き出すこともできる。(なお、選挙課の担当者役職は当時のもの)
  地元の選挙管理委員会や候補者陣営から「公開討論会は違法」と難癖をつけられる前に本見解を提示し、先手を打つことがポイントである。


《公開討論会および合同個人演説会に関する自治省選挙課の見解》 

 ●大竹邦実選挙課長(AERA1997年10月20号)

 「告示前でも政治活動は自由で、立候補予定者に集まってもらって話を聞こう、という気持ちもよく分かる。選挙運動とは投票を得、もしくは特定の候補者の当選を得さしめるための行為で、そうでなければ政治活動だ。現職が実績を語ったり、他の人々が批判しても客観的事実の表明である限りはかまわない。」

 ●山本信一郎選挙課長(AERA1998年6月15日号)

 「候補者同士が合意し、合同で個人演説会を開くなら問題はない。選挙前でも、一般的な政治討論会なら事前運動に当たらない。ただ、投票依頼のようなことを言わないように注意してほしい。」


 (キ) 公開討論会に関する新聞記事数点(資料29〜 )

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 第2ステップ 記者会見の準備

 この7点セットができた時点で記者会見の準備をする。おそらくほとんどの人は記者会見などしたことはないと思うのでおじけづくかもわからないが、全く心配いらない。もしも知り合いの新聞記者がいればその人に7点セットを見せ、今度の選挙において公開討論会を開くので、記者会見がしたい旨伝える。また、あなたに知り合いの記者がいなかったら、大体市や町また県の役所には必ず「記者クラブ」があるのでそこに直接電話してみる。そして「今度記者会見を開きたいので幹事社を教えていただきたい」と尋ねる。幹事社とはその月の記者会見の段取りを行っている新聞社のことで、一月ごとに各社持ちまわりで担当しているらしい。幹事社の記者の方を教えて頂いたら、その方にも同じように討論会の趣旨を説明しその上で「記者会見を開きたいのですが、都合がよろしいのはいつですか」と尋ねる。地域や役所によっていつ記者会見をするのが適当か、幹事社の方は親切に教えてくれる。大体はウィークデーの2時ぐらいに設定されることが多い。この記者会見に対しては時々「候補者の参加不参加もわからないのに記者会見は開けない」と無碍に断られる場合もないでもない。しかし後で述べたいと思うがこの記者会見は非常に大きな意味を持つものであり、全国でもこの記者会見は通常のことなので粘り強くお願いする。
 この記者会見は次の3つの目的を持って開催する。ひとつは、この公開討論会の開催をはじめて公にし、市民にその存在を告知することである。もうひとつは、候補者に対してこの公開討論会の主催者が決して怪しいものでなく、きわめて公平中立に開かれることを知って頂くことである。そしてもうひとつはマスコミの方々に公開討論会の趣旨を知っていただくことである。今まで討論会を開催するにあたって随分とマスコミの方の協力を得た。無論その公開討論会が中立に行われることが大前提であるが、いつも私たちの活動を支援し後押ししてくださった。その意味でもこの公開討論会をマスコミの方にきちっと伝えることは、それ以後の活動を展開して行くうえにも貴重である。
 老婆心ながら申し上げれば、仮に特に親しい新聞記者の方がいても情報をその人だけに流すことはいらぬ揣摩臆測を呼び、つまらぬ誤解を受ける。さらにマスコミは一社だけが「すっぱ抜き」「特ダネ」を掲載するのを嫌う。あくまで基本の情報は各社平等に流すべきであろう。さて記者会見の日時が確定したらいよいよ候補者へのファーストアプローチに入る。
  なお、次からの「3.候補者へのファーストアプローチ」「4.選挙管理委員会への届け出」「5.記者会見」の3つのステップは、同じ日(=記者会見の日)に行うのがポイントである。

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